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物語は無意味なものではない 『魔王物語物語』著:ヒマリ 感想

読書感想メモ 小説
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作者:ヒマリ  監修:アタットリー
(登場キャラクター(語り部)がこの本を書いたという設定)

イラスト:きむら 原作(その他):カタテマ
2014年9月19日にPHP研究所から出版。


※旧ブログから修正・加筆しております。

魔王物語物語。

通称「まもも」
元々はフリーゲームサイトカタテマのテツ氏が作成したフリーゲームです。

これはそれがノベライズされたもの。
最近は”ゆめにっき”を始めとしてフリーゲームが、
ノベライズされることが多いですね。

フリーゲーム「まもも」はダウンロードしましたが、
ヘタレゲーマーには難しすぎて、かなり序盤の方でプレイを諦めた記憶があります。

文章は堅実で簡潔で静かな印象。
堅実だけれどもするするさらさらと読めます。

あらすじ

舞台は暴君の圧政が敷かれている大陸から
海を隔てて存在するひとつの島。
「ネグラ」で暮らすヒマリは、白紙の本を拾う。
実はヒマリには生まれた時にとある予言がされていて…

 

フリーゲームのノベライズ not世界系 ファンタジー 

世界を救う物語ではなく誰かのための物語

「魔王」とタイトルにはありますが、これは別に世界を救うとか
悪を倒してお姫様を助けだすとかそういう壮大なお話ではありません。
小さな、誰かひとりのために紡がれる物語です。

物語を完結させることは自分自身と向き合うこと

物語の目的は「魔王物語」と呼ばれる、結末がないお話を完結させること。
そのために一章、二章、三章の原本を持ち主をヒマリは探すことにします。

登場人物のルドルフ、ナナ、ヒクグモはそれぞれに事情があり、魔王物語を完結させるためには彼ら彼女たちが自らの
過去に立ち向かう必要がありました。

心残り、畏れ、後悔、それぞれが異形の姿でヒマリたちの前に立ちふさがります。

これははじまりのはじまり

『魔王物語』は完結しても、ルドルフ、ナナ、ヒクグモたちにはまだ続きがあります。彼ら彼女たちは生きていて物語をつづっているのです。

そして、1つの物語が終わったとしても世界は何一つ変わっていません。

大陸では暴君の圧政で苦しんでいる人たちがいます。
その現実は変わらない。

それでもたしかに変わった完結者たちは、それぞれの目標のため、夢のため、目的のため、島から旅立ちます。

「魔王物語物語」は、現実の厳しさ残酷さを受け入れつつもそれでも前を向いて歩もうとする人たちを描いている、そう感じました。

詳しくは語りませんが、ナナとヒクグモは立ち止まらないでしょう。

たとえその結末がハッピーエンドでなくともバットエンドであろうとも、彼女、彼らは今度はヒマリの手を借りず自らに向き合い、そして終わらせるのだと思います。

そして、主人公ヒマリが背を押した彼らはまた誰かの物語を完結させ、完結させられた人がまた誰かの物語を完結させて…

やがて世界を変えていくのではないでしょうか。

これははじまりのはじまり。
プロローグに至るまでの物語。
嵐が始まる前のお話。

魔王物語物語からの印象に残った一節を引用したいと思います。

物語は意志と願いと希望と奇跡、あらゆるものが記されている。
無意味なものではない。

一応物書きの端くれとしては、感じるものがある一文です。

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