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歪な友情が紡ぐ歪な”アイ”の物語 『カスタム・チャイルド 罪と罰』感想

読書感想メモ 小説
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※旧ブログからの記事を加筆・修正しております。

作者:壁井ユカコ
メディアワークス文庫

電撃文庫のデビュー作『キーリ』で知った方です。
数年前になりますが、無印のカスタム・チャイルドの方も読みました。

 

あらすじ

内容(「BOOK」データベースより)
至高の美少年ながら母に遺棄された過去を持ち、“犯罪者の遺伝子”に傾倒する春野。父が愛好するアニメキャラクターの実体化として作られた少女レイ。遺伝子操作を拒絶する両親を持つ“遺伝子貧乏”清田―16歳の夏に出会った3人は、反発しあい傷つけあいながらもかけがいのない友情を築いていく。遺伝子工学が発展し、子どもの容姿の“デザイン”が可能になった仮想現代を舞台に、社会によって歪められた少年少女の屈折や友情を描く、著者渾身の青春ストーリー。

 
こういう要素が好きな方におすすめ
IF未来近代日本、遺伝子操作、愛憎入り混じり兄弟、男の子同士の友情、平凡と美形
愛憎入り混じりトライアングル、青春ストーリー、春野と清田の関係がエモい

遺伝子操作で子供の容姿から才能までカスタムできる技術だけが発達した戦後の日本。
現代とは違った発展と遂げた日本で紡がれる物語。

迷える苦しむ少年少女

遺伝子をカスタムされていない遺伝子貧乏<ジーンプア>である清田
絶世の美少年でありながら実の母親から拒絶された、春野
父親が愛するアニメキャラクターに似せられた少女レイ

三人のいびつな親子関係

三人はそれぞれいびつな親子関係の中育っています。
春野の母親は自分の理想通りに育ったない春野の教育を放棄し、その偏愛は弟に注がれるようになります。

春野はチカという女性に育てられます。

清田の父親は遺伝子操作を異様に嫌っており、差別意識を持っています。その差別意識が原因で
清田は母親を亡くしています。

日々の生活も厳しく、遺伝子をカスタムされていない遺伝子貧乏である清田自身も周囲からの差別に苦しんでいました。

レイの父親はいわゆるオタクです。
愛好するキャラクターに似せた遺伝子操作をしたレイを代理出産で産ませて、育てますがレイがキャラクターの年齢を越えるとともにその関係は破綻していきます。

三人が出会うことでそれぞれの硬直していた親子関係は動き出します。

それが悪い方にか良い方にかは実際に本を取って確かめてほしいです。

いびつな友情

とにかく春野が清田のことをどんどん好きになっていくのがたまりません。
最後の彼の選択は清田を解放させるため。

彼を「きれいなまま」「まっすぐなまま」でいてもらうためのものです。
清田は本当に熱血でまっすぐです。ジーンプアという被差別者の立場にありながら屈折した思いは抱えながらも彼はまっすぐです。

レイと春野は彼を「きれい」だといいます

 

春野は清田と一緒に居たがります。
清田はレイに淡い恋心を抱きます。
レイは春野に好意を清田に嫉妬を抱きます。
見事なトライアングル。

兄弟

春野には瓜二つの弟がいます。
彼は母親に期待と偏愛を一心に注がれています。
それははたからみても息苦しいものです。

息苦しさをずっと感じ続けた彼は捨てられた春野を「自由になった」「自分を置いて逃げた」と
思い込んでおり、その憤りを春野にぶつけます。

 

きれいなあいといびつなあい

「キレイ」な愛情も作中にはたくさんでてきます。
例えば養母であるチカさんが注ぐ春野への愛情。
清田が抱くレイへの淡い恋心。

でも、その反面いびつな「あい」がこの物語の中心とも言えます。

それぞれのいびつな親子関係。いびつな愛情。
過剰な偏愛。
狂っていく関係。

作者である壁井ユカコさんは機会があればまたカスタム・チャイルドの世界を書きたいと
あとがきでおっしゃっておりました。
可能であれば、またこの三人に出会いたい、
この物語の後の三人の関係を知りたい。
そう強く願っています。

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