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世界一優しい探偵『雰囲気探偵 鬼鶫航』感想

小説
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※旧ブログから修正・加筆転載しております。


雰囲気探偵 鬼鶫航

あらすじ

思慮深そうな眼差しに、冷静な物言い。三つ揃いのスーツを着こなして、泰然と構える佇まいは紛れもなく名探偵だ。雰囲気だけは――。鬼鶫探偵社の経理にして相棒の佐々は、彼が謎を解くところを見たことがない。「推理する気はあるのか!?」ヤキモキする佐々を横目に、しかし事件はなぜか鬼鶫の目の前で解決する!

出版社 講談社文庫
作者  高里椎名
イラスト

★ミステリー 幼馴染 探偵と助手 推理しない探偵 バディ

推理をしない名探偵

難解な言葉の言い回し、三つ揃いのスーツ、手に持ったステッキに愛用のハンティング帽子。物腰、見た目は完璧に物語の中の名探偵。

なのに、彼は推理をしない。

鬼鶫(おにつぐみ)が推理をしないまま、不思議と事件は解決していきます。
探偵として活躍してほしいと願うのは探偵事務所の経理で彼の幼馴染の佐々

彼らをあたたかく見守り、時に手を貸す刑事の丸古。
鬼鶫をライバル視する商売敵の探偵、日置。
日置の相棒であるクールビューティ・七瀬。

彼らが主軸となって、

脅迫

詐欺

ストーカー

殺人

これら4つの事件を解決していきます。

 

鬼鶫は探偵らしく依頼者の心に寄り添い、調査しますが、彼は事件を解明しません。
あえていうのなら事件のほうから勝手に解明されていきます。

鬼鶫の実力とは…それは殺人事件で明かされます。

銀の檻を溶かして 薬屋探偵妖綺談 (講談社文庫)

薬屋探偵妖綺談で有名な高里椎奈さんの作品です。

 

やさしい探偵

鬼鶫は推理しませんが、彼は依頼人の心に何よりも寄り添います。

第四話目は殺人がテーマですが、彼は犯人を糾弾することもなく、被害者にも犯人にも(そしてもちろん周囲にも)感謝され事件の幕を閉じます。

彼は推理するまでもなくわかってしまうのです。
そして鬼鶫は誰よりも探偵らしくあろうとしています。
今までの探偵ものにはない「やさしさをもった探偵」ではないでしょうか。

ギスギスしていたり、暗く重くなるようなお話ではありません。
犯罪が起こり、被害者は存在しますが、鬼鶫の探偵らしい行動のおかげか
どこか心温まる物語となっています。

日置七瀬コンビの一見日置が主導権を握っているようで、七瀬が強いという…
日置は完全に噛ませ犬っぽい(が彼もまた優秀な探偵です)

コミカルな面もあります。ミステリー小説ですが、雰囲気はそこまで重くなくさらりとした読み心地を味わえます。

 

鬼鶫と佐々の絶妙な関係性

探偵と助手(経理ですが)の関係である鬼鶫と佐々がなんともいえないです。
明確に作品の中で提示はされていませんが二人の間にある信頼感がなんともいえない。
今で言うならエモい。

佐々は鬼鶫に探偵らしく事件を推理して解決してほしいと強く願っています。
でも、鬼鶫は日置に挑発されても、嫌味を言われても気づかずにそのまま受け止めます。
(佐々曰く人を疑うことを知らない)

それでギリリッとなったり、口惜しくなってしまう佐々が愛おしいです。

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