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物の怪は物語に似ている『源氏 物の怪語り』

読書感想メモ 小説
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ー物の怪は物語に似ているー 『源氏 物の怪語り』著:渡瀬草一郎

源氏 物の怪語り

作者は、渡瀬草一郎さん。

あらすじ

かの有名な源氏物語の作者、紫式部が主人公。
彼女と彼女の亡き姉と当時彰子につかえていた女房たちがモノノ怪と紡ぐ物語。

紫式部がまだ紫式部と呼ばれる前、藤式部と呼ばれていた頃のお話です。平安時代女性が本名を知られるのは「恥」とされており、家族や夫となる人にしか教えることはしませんでした。そのため、父親がついていた役職などが呼び名を決めていたそうです。

舞台は平安時代、モノノ怪、宮中が舞台、歴史上の登場人物(紫式部、中宮彰子、和泉式部など)

ひとつめは不安の話

櫻と不安と蜘蛛のお話。
自己嫌悪や自らを縛るものが「嫌いなもの」として現れて自らを苦しめる、そういうお話でした。

ふたつめは恋の話

恋多き女性として有名な和泉式部が登場します。
多才であり、美貌の持ち主。
二人の皇族と恋に落ち、どちらとも死に別れている女性。

歌人としても名高き、彼女が歌った歌は今もなお有名です。
2つ目物語は和泉式部が藤式部にとある相談を持ちかけたことからはじまります。

恋い焦がれれば、魂魄が身体から剥がれ焦がれる相手の元にいってしまう平安時代らしいお話でした。

みっつめは憧憬と罪悪感のお話

紫式部が仕えていたの中宮彰子(ちゅうぐうしょうし)と清少納言が仕えていた定子(ていし)が中心となるお話。

彼女たちの名前は一度は歴史の授業などで耳にしたことがあるかと思います。
藤原道長の娘とその親類にあたる女性の名前です。
どちらも同じ帝のもとに嫁ぎ、男児を産みます。

中宮彰子が抱える憧憬と罪悪感。
人のおもいは時としてもののけを呼び寄せ、怪異と化す。

よっつめは罪悪感と親子のお話

個人的にはこれの話が一番好きです。

藤原道長が詠んだ歌。

この世をば わが世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも なしと思へば

のあとに道長がその十年後に亡くなったという説明がはいり、

そして、

欠けぬ月など月ではない。

という一文がきて、身悶えました。
作者の平安時代の造詣の深さとそれに対する感受性というか解釈がすばらしいです。

全編を読み終わったあと思ったのはこれは”姉妹の物語”なのだ、ということです。

藤式部が紫式部となるまでのお話。
もののけと人の心と姉妹と絆のお話。

それが、渡瀬草一郎作『源氏 物の怪語り』です。

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