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ロード・エルメロイII世の事件簿 5 「case.魔眼蒐集列車(下)」感想

レール・ツェッペリン 小説
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ロード・エルメロイII世の事件簿 4 「case.魔眼蒐集列車(下)」

あらすじ

魔眼蒐集列車(レール・ツェッペリン)で起きた殺人事件は、誰も思いがけない方向へと展開した。新たな戦士の襲撃によってロード・エルメロイII世は倒れ、かの列車もまた大いなる脅威に遭遇する。この危地を脱するため、グレイは過去視の魔眼を持つ代行者カラボー、スパイを自称する少女イヴェットと協力することになるが……。暴かれる魔眼。謎の英霊と死徒の落とし子。天体科(アニムスフィア)の一族たるオルガマリーが気づいた秘密とは。複雑にもつれあった事件の中で、ついに魔眼オークションが開催される――!

微ネタバレ注意。

 

主要登場人物

ロード・エルメロイⅡ世
愛され講師。
お話の探偵役にして魔術の解体者。
大切なモノ(聖遺物)を取り戻すために魔眼蒐集列車に乗り込む。
サーヴァントにより深手を負わされ、意識不明。

グレイ
師匠絶対守るレディ。内弟子。
墓守の一族の出身。
訳ありアルトリア顔。

メルヴィン・ウェインズ
トランベリオの調律者。
自称ウェイバー・ベルベットの親友。
ライネスと同じ意味での性格破綻者。

ヘファイスティオン
聖遺物盗難犯人に召喚されたらしいサーヴァント。
赤い鎧を身にまとう女戦士。
ちなみに史実のヘファイスティオンさんは男性です。
(ここで型月お得意の女体化か…と思わせるのも罠)

カウレス・フォルヴェッジ
現代魔術科の生徒。
東出祐一郎の Fateシリーズ派生作品『Fate/Apocrypha』からの登場。
ユグドミレニアの一族は存在せず、聖杯大戦も行われない世界。
姉であるフィオレは魔術刻印を移植されるまえに出奔しており、現在彼が後継者のよう。

イヴェット・L・レーマン
現代魔術科の生徒。
中立派(メルアステア派)からのスパイ。
魔眼で有名な一族の出身であり、一族の魔術の発展のため魔眼オークションに挑む。

化野菱理(あだしのひしり)
『剥離城アドラ』にて登場した法政科の魔術師。
着物をまとった妖艶でミステリアスな美女。
個人的な目的で魔眼蒐集列車に乗り込んだらしい。

オルガマリー・アースミレイト・アニムスフィア
時計塔。天体科君主(ロード)の娘。
『Fate/GrandOrder』からの登場。
いきのこってほしい

トリシャ・フェローズ※被害者
オルガマリーの従者であり家庭教師。
虚空属性。
魔眼持ち。

カラボー・フランプトン※容疑者
魔眼蒐集列車の乗客。
聖堂教会の神父。
泡影(ほうえい)の魔眼持ち。

ジャンマリオ・スピネッラ
魔眼蒐集列車の乗客。
表の顔はテレビに出演しているいわゆる芸能人。

レアンドラ
魔眼オークショナー

ロダン
魔眼蒐集列車の車掌

支配人代行 
薔薇の冠を戴く。
美しい人ならざる存在。

現代魔術科前学部長
ロード・エルメロイⅡ世の前任。

ライネス・アーチボルト・エルメロイ
ロード・エルメロイⅡ世の義妹。

一行はアインナッシュの森へ

エルメロイⅡ世はは意識を失ったまま、列車はアインナッシュの森へと進んでしまいます。
アインナッシュの森とは”死徒”(簡単にいうと吸血鬼)が生み出した”固有結界”のようなものらしいです。

森自体が意志を持ち、脱出を図るグレイたちに襲いかかります。
教会の神父(黒鍵使いでやっぱりめっちゃ強い)魔眼使いの自称スパイの同級生などと協力をしてなんとか攻撃を凌ぎますが、そこで謎の英霊ヘファイスティオンと遭遇してしまいます。

英霊と相対できるグレイはやっぱりちょっと強すぎないかな。
出自からして規格外ではあるのでしょうけれども。
あとお目付け役と言われて安心してるグレイたんが尊い。

自称ウェイバーの親友メルヴィンの登場

ウェイバー(あえてこう呼びます)の周りにはこういうタイプしかいないのか。
加虐心煽る大賞を贈りつけたい。
スヴィンに次ぐ残念な美形その二じゃん。

でも彼の存在がなければzeroのウェイバーとイスカンダルもいなかったと思うと、
なんかめちゃくて複雑な気持ちになりつつ拝みたくなります。複雑だけど。

登場人物紹介のカラーページで車椅子に乗ったロード・エルメロイ二世に視線をやって笑んでるんですよ、メルヴィンさん。
なんかもうこういう男同士の謎の激重感情の気配にガタッと椅子をならして席を立ってしまうのはもう変えられない性…

直死の魔眼とは究極の未来視

今作では化野菱理が探偵役として推理を披露する場面があるのですが、魔眼が物語の中央にあるからか、『月姫』、『空の境界』など今までの型月作品に触れてきた人であれば思わずそうきたか!と唸り、なるほど!と納得してしまう場面がいくつもあります。

魔眼に対する解釈、捉え方‥
特に直死の魔眼について。

死を手繰りよせること、は究極の未来視。

直死の魔眼は『月姫』や『空の境界』で主人公が持ってしまった異能の瞳として登場します。

生きとし生けるもの、存在するモノ、はては概念までにほころびとしての線と点が見え、それをなぞると対象は死に至る、壊れてしまう、という魔眼です。

映画にもなりそういう戦闘描写も目にしてきたので攻撃的な捉え方をしてしまいがちですが化野菱理の”究極の未来視”という言葉に新鮮な驚きと共に納得もしました。

三田先生本当にすごくない?
魔術考証をなさっている三輪清宗さんって方もすごいけど、これ思いついたであろう三田先生が一番すごくない??

死を手繰りよせること、は究極の未来視。
生物はみないつか、死んでしまうから。

ならば、 

究極の過去視とは、過ぎ去ったかつてを今にまで手繰り寄せること。 

 

師匠が気を失ってる間に、化野菱理が探偵役として指摘したのは神父カラボー・フランプトン。
聖堂教会の神父であり、過去とある事件の捜査を担当していた人物。
そして、究極の過去視を可能とする抱影の魔眼の持ち主。

しかしながらこの化野の推理には動機がないのです。
誰が、どのようにしてやったのか、しかない。

フーダニット(誰がやったのか)

ハウダニット(どうやってやったのか)

ホワイダニット(どうしてやったのか)

常にロード・エルメロイⅡ世が重要視するホワイトダニット(どうしてやったのか)だけは説明しきれていない。

そのあたりは見事(?)復活したロード・エルメロイⅡ世が行ってくれたのですが…もうほんと…今回のお話は謎が山積みでそれぞれがどう関係してどう解決に導かれるのだろうかと心構えてましたが、そ う き た か!!

と、思わず膝を叩きました(たたきすぎていたい)

ミステリーでは同じみに入れ代わりが今回のトリックのひとつ。
これ型月作品を読んでる人ほどひっかかると断言します。

聖杯ちゃんセキュリティ甘すぎなのも問題やった。
もっとしっかりして御三家。

これは過去の残像の物語

残像、過去、偽物。
その名称にはエミヤを思い出します。
背中で語れ。

すべては過去の残像。
終わってしまったモノの片鱗が泡のように浮き上がってきただけ。
引き寄せられてほんの刹那、今に姿を見せただけ。

ヘファイスティオン、彼女の正体はまさしく”フェイカー”の名称には相応しいものでした。
相対するロード・エルメロイⅡ世はまさしく神秘の解体者。
丁寧に残酷に解体してはさらけ出す。 

別名神秘の地雷踏み。

オルガマリーはオルガマリー・アニムスフィアだった

この世界では聖杯戦争に参加していないからおそらくカルデアもない、マリスビリーも存命。

それでも彼女はオルガマリーでした。
ロードの娘、時期ロードという重責に耐えようと足掻いて努力して誰かに父親に認めてもらいたい、見てもらいたい、褒めてもらいたいと願うひとりのどこにでもいる少女。

魔術師としてのあり方は身についているけれどFGOの序盤で叫んでいた想いはこの頃から抱えていたのだと察せられます。

だから、ロード・エルメロイⅡ世と言葉を交わして声を荒げた時に、(カルデアが存在する)世界では得られなかった何かを得られたらと願います。

少なくともトリシャさんの死を経て、彼女は自分は怒っていいのだと気づけたのだから。
これはFGOの彼女との違いなのかもしれません> 
次期ロード同士としてライネスちゃんとも友好関係を築き上げてほしいです。

終わったこと

ロード・エルメロイII世は生徒たちにほんとうに慕われてて嬉しい。
講師として教壇に立つ姿があまり出てこないので実感がなかったのですが、あの、ウェイバーくんが立派になって、と涙ぐんでしまう親戚のおばちゃんの気持ちになります。

過去と残像のお話だった今回の事件を乗り越えて、ロード・エルメロイII世もまた過去への想いに一区切りつけます。

過去の己の過失を、王の敗北は己の存在故だったのだと証明したがっていた彼は、過去の残像と対峙して、未来を見据えることを決めました。

グレイちゃん…本当に健気でたまらんです。
自己肯定感が低くて、人と関わるのが怖くて、故郷にいた頃、満足に話せていたのは魔術礼装のアッドだけ。
そんな彼女がさまざまな体験を経ていろんな人と関わって、どう在りたいのか、答えを出すのです。

今回のお話は主要キャラである二人が過去へ区切りをつけ未来を見据え、前を歩き出すその一歩となる物語でした。

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