あらすじ(文庫裏)
帝の寵愛を一身に受けて懐妊した、宗孝の八番目の姉・梨壷の更衣。彼女に密かに対抗心を抱く異母妹の九の姉と宗孝は連れだって稲荷社へ更衣の安産祈願に訪れるが、そこで怪しげな老巫女に声をかけられる。遠く離れて暮らす夫への不信感や不満を言い当てられ、動揺する九の姉。その夜、再び姿を現した老巫女は、「あなたさまは特別なお方」と九の姉を連れ出し…。波乱の予感のシリーズ第6弾!心躍る平安冒険譚!
『ばけもの好む中将』六巻。
作者:瀬川貴次 出版社:集英社文庫
カバーデザイン:百足屋ユウコ イラストレーション:シライシユウコ
こちらにびびっとくる人向け
苦労性主人公、美貌の青年、バディもの、平安ミステリー、12人の姉がいる弟
ホラー性は少なめ、人間の闇が怖い、毒親注意報
苦労性主人公、美貌の青年、バディもの、平安ミステリー、12人の姉がいる弟
ホラー性は少なめ、人間の闇が怖い、毒親注意報
一言感想:宗孝、恋されるの巻
「あなたは特別だ」って、いう自己肯定感を思いっきりくすぐる言葉は毒親持ちにはクリティカルヒットするからあかん(震え声)
九の姉登場
今まで登場してきた宗孝の姉たちはみんな個性豊か。
女性の立場が現代よりも弱く自由のない時代でも強かに凛として生きていて。
日々楽しく、人並みに悩み迷いながらも己の道を自分の手で切り開いていっている好感がもてる女性たちばかりでした。
九の姉はちょっと違います。
かなり好みの分かれるタイプの女性。
九の姉
容姿はすらりとした美しい人です。
これと決めたことは頑として譲らない我の強い人。
異母姉妹である更衣(こうい)が、見初められた新嘗祭(にいなめさい)で本来踊るのは彼女だった。
それを嫌だとつっぱねて、強引に結婚。
(既婚の女性は舞手になれないため)
代わりに踊った更衣が寵愛されてることに嫉妬している。
これと決めたことは頑として譲らない我の強い人。
異母姉妹である更衣(こうい)が、見初められた新嘗祭(にいなめさい)で本来踊るのは彼女だった。
それを嫌だとつっぱねて、強引に結婚。
(既婚の女性は舞手になれないため)
代わりに踊った更衣が寵愛されてることに嫉妬している。
という少し困った背景の持ち主。
彼女の事情を知りつつ、結婚してくれた夫が傍にいてくれたらまた違ったのでしょうけれど、夫は地方に出張中。
文も長いこと届かず、他所で女を作ったのだといじけている。
容姿鍛錬で舞いが上手で、自我が強くて…
でも、「もしもあのとき違う選択をしていたら…」という後悔を抱えていじいじて迷って…更衣や小宰相に対しての妬みを募らせてイライラさせられました。
小宰相とは似ているようで正反対の性格ですよね。
でも、九の姉を完全に嫌えませんでした。
新嘗祭(にいなめさい)という大舞台。
失敗すれば自分も終わり、家族にも迷惑がかかる。
でも、成功したら人生が変わる、かもしれない。
そんな場面がいざ人生の中で迫ってきたら彼女のように逃げることを選びたくなる気持ちもわかります。
時の権力者に見初められて、寵愛をうけるシンデレラストーリーのヒロインになれるかもしれなかった
でも、実際に人生が変わったのは彼女の姉妹だった。
しかも腹違い。
彼女の母親との確執もあり、当時の心中は穏やかではなかったでしょう。
最後は九の姉なりに呪いを断ち切ったと思いきや、現実に打ちのめされて夫も弟も、すべて振り切って伸ばされた手にすがりついてしまった。
宣能の父親マジこわい
右大臣の考えてることが読者にもわからぬ。
ホント怖い。
初草の母親との文を燃やしてしまった代わりに、お気に入りの宗孝の姉を女房として迎えた
ってそれ人としての心もってんの???
右大臣にも彼なりの事情や心情があるのはわかります。
しかしながら底が見えずにほんとこわい。
毒親と呪われた娘
現代にもある母娘関係を平安という舞台に落とし込んで母親の「お前はできない娘」という呪いに苦しめられている娘。
九の姉と実母の関係はまさにこれ。
大抜擢のチャンスを投げ捨ててまで結婚に逃げた気持ちがとてもわかる。
でも結局、離れきれなかった。
夫のやさしさに甘えてしまった。
信じきれずに逃げ出した。
という家族関係あるある、というのを、平安時代という大昔を舞台に描ききるのがほんとすごい…
語彙力がなくなります。
今まで登場した姉たちは結婚なり女房なり独身なり出家なり。
当時の女性ができる可能な範囲での選択を自分で選んで好きに生きています!って感じの人たちだったばかりに九の姉の異様さが目立ちました。
九の姉はこれからどうなるのでしょうか。
更衣は無事出産を終えられるのか、九の姉の夫がどうなったのかもわかりませんし、いろいろと気になります。
コメント