作者:花川戸菖蒲
イラスト:石据 カチル
富士見L文庫から2016/10/15発売
※旧ブログから修正・加筆しております。
あらすじ
万華鏡専門店を営む佐香は「人を喰う美」を生み出す才能を持つうつくしい容姿の青年。
しかし、生活能力は低く年下のオーナーでありパトロンでもある森住に頼りっきりでしっかり胃袋を掴まれていた。
佐香は人ならざるモノを視ることができ、また万華鏡を通して人や人ではないナニかと「同期」することができる特殊体質の持ち主。
そんな彼のもとにやってくるお客はみんなワケアリのようで…
おいしいものとうつくしいものに弱い、冷たいようでやさしい佐香さんのギャップにやられました。
森住君の人当たりがよくて柔和にみえて実はドライという性格と対極性がとてもいいです。
この二人の関係性もなんともいえないです。
一人で生きていくと思っていた佐香とそんな彼にはじめて「助けてほしい」と思わせた年下の青年森住君。
森住君が作中で作る料理がどれもこれもおいしそうで「なにこの飯テロ」とお腹を押えながら読んでました。
涎が溢れ出てきます。
お話もとてもよかった。
一話目「名もなきお店と万華鏡師の妖美な罠」
話の導入部分なので佐香さんと森住君の人となり、お店のこと、佐香さんの能力のことなどがざっと語られます。
この時期はまだ佐香さんが森住君にツンケンどんとしてますけど、これからどんどんデれてくんですよね…
森住くんははじめから尽くしまくってますけど。
”物妬み”というあやかしに憑かれた女性がたまたま佐香のお店に立ち寄ります。
このあやかしめちゃくちゃいやらしいんです。
現代社会に憑かれている人たくさんいそうです。
二話「日だまりいろの猫とテレイドスコープ」
このお話が一番好きです。
男子高校生がお店に訪れます。男の子が万華鏡に興味を持つということがうれしかった佐香があれやこれやと紹介していくうちに彼には猫が憑いていることがわかります。
悪いものではなく、また憑いているとはいっても少年のほうが猫を無意識に引き止めてしまっている様子。
どうやら男子高校生は愛猫を亡くした悲しみをずっと引きずっており、
その悲しみに惹かれて愛猫の魂も傍を離れられず行くべき場所にいけなくなっているよう。
そんな一人と一匹のために佐香はあることをします。
佐香さんのやさしさが徐々に垣間見えてくるお話です。
三話「お嬢さんと『神代の海』の帰る場所」
前々から訪れていた佐香の作品『神代の海』を返して欲しいと涙ながらに訴える女性。
どうやら女性には水浸しの女性の霊が憑いていて、幽霊が女性を操っていることがわかります。
彼女が返して欲しいと訴えているものが佐香の作品に使った青い宝石の欠片であり、
それはもともとひとつの石で女性のエンゲージリングについていたものであることも。
佐香は彼女に指輪を返すためにひとつの作品を作り上げます。
佐香さんと森住君の絆がものいっそう深まっていることがわかるお話。
そして佐香さんの食い意地っぷりがよくわかる回でもあります。
佐香さんの凍てついていた心が森住くんと出逢ってまたいろいろな体験を通して、
春先に溶ける雪のようにさらさらと水にかえっていくようで。
どんどん柔らかな表情を森住君に見せるようになっていきます。
佐香さんはやさしいよね…うんよくわかるよ森住君…(*´Д`)となる最後でした。
シリーズ化してほしい作品です。
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